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短文【最遊記外伝完結記念SS】
素敵な仲間にありがとう








 桜の花びらがひらひら舞って髪の毛を薄紅に彩る。
 もっと、もっと降り注いで自分の体が埋もれてしまったらどうなるだろう?

「笑っちまうよなァ…」

 花びら一枚なんて軽く息を吹きかければどこか別のところへいってしまう。流石に一メートルぐらい積もれば押しつぶされてしまうだろうが。

 でも。

 桜に埋もれて永眠るなんてちょっと洒落てて俺は嫌いじゃない。そんな幻想的でのんびりとした最期とかさ、いいと思うワケ。ついでに酒を浴びるほどのんで美女が看取ってくれれば最高の旅立ちだね。………まァ、どっちかって言うと桜に埋もれているのは美女でその眠りから起こす紳士な男のほうが自分にはしっくりくるのだけど。

 花びらを動かしたくないからずっと仰向けの体制でいたんだけど、地面がちょっと湿ってたら流石に厚い軍服にも浸透してきて冷たい。仕方なくごろりと体制を変えた、その時。どこからか声が聞こえた。

「───………ちゃーん…」

 静かに、身をひそめて耳をすます。

「──…けんにいちゃーん…!…」

 どうやら金色の瞳をしたお猿ちゃんが自分のことを探しているらしい。

「──もう、どこ行っちゃったんだろー…」

 キョロキョロと辺りを窺っている様子に少し吹き出し片手を挙げてヒラヒラと合図する。すると「あっ」と嬉しそうな声をあげて悟空が駆け寄ってきた。
「ケン兄ちゃん!こんなとこいたんだな、天ちゃんが探してたよ」
「あン?あー…どうせなんかの実験台にされるだけだからほっとけほっとけ」
「えー?天ちゃんケン兄ちゃんの部屋でお茶入れてたよ、みんなの分」
「てことはお前と金蝉の分も?」
「うん」
「……お前飲んだ?」
「まだ!ケン兄ちゃん呼びにきたから。でも金蝉は天ちゃんに進められて飲んでたよ」
「………………ごしゅーしょーさまです」
「ごしゅーしゅー?」
「ごしゅうしょう、な。………色々お疲れ様ってこと」
「金蝉疲れてるの?」
「……どっかの小猿のせいでな」
「むきー!」
 天蓬のお茶のせいで、という言葉は飲み込んで(説明するのがめんどくさかった)そう言えばぷくーと頬を膨らませた悟空が効果音でもでるならぽかぽかと叩いてくる。
 のどかだなーと、思っていると遠くから白いものが歩いてきて、それにいち早く気がついた悟空が手を振って名前を呼ぶ。
「あっ、てんちゃーん!」
「おやぁ、悟空。捲簾はこんなところに隠れていたんですね」
「あら、バレちゃった」
「あれ、金蝉は?」
 天蓬一人に疑問を持ったのだろう。遠くを伺うように背伸びしている。
「金蝉には部屋で待っててもらってます」
 荷物になるんで、という天蓬の心の声まで読み取れてしまう自分がちょっと悲しい。
「じゃあ捲簾も見つかりましたし、戻りましょうか悟空」
「うん!」
「美味しいスコーンを頂いたのでお茶請けにだしましょう」
「わーい!」
 嬉しそうに飛び跳ねて天蓬と手を繋ぐ悟空に一瞥してまた仰向けになった。
「捲簾は来ないんですか?」
「んー…もうちょっとしたら行くわァ」
「早くこないと悟空に全部スコーン食べられちゃいますからね」
「あいよ」
 ヒラヒラと手を振ってかわすと天蓬は仕方なさそうに微笑んだ。
「ここでうたた寝してて、恨みを買った方から刺されないようにしてくださいよ、汚れますから」
「女の上で腹上死なら大歓迎」
「せいぜい噛みちぎられないようにね」
「女抱きながらイケるなら本望デス」
「悟空の前でそんな下品なこと言わないでください」
「以後気をつけまぁーす」
 では、と悟空の小さい手をひいて天蓬は立ち去る。…………天蓬の、日の光にあたってキラキラしてるあの頭の上あたりのものはなんだろう……まさかフケ?フケな訳ないよな?いくらズボラの天蓬だからと言って、流石に光るほどフケはためないだろう、ためてないであって欲しい。
 …………………しかし残念なことにフケという選択肢しかおもいつかなかった。









「ケン兄ちゃん…!どうしよ、金蝉起きない!金蝉目が白いよ!」




 帰ってきた自室で待っていたのは普段通りの天蓬と泣きそうな悟空と白目を剥いて口から泡をふいた金蝉だった。
「…………お前ホント、何飲ませたの」
「おかしいですね、リラックスと安眠効果のあるお茶を作ったんですが」
「安眠じゃなくて永眠じゃねーか」
「おや、うまいこと言いますね捲簾」
「おや、じゃねーよ!金蝉死にかけてんぞ!」
「いえ、僕の計算には狂いありません。だから死にません」
「素直に間違いを認めろ!」
「嫌です。だって僕が間違うわけないもン」
「キョドってんのが証拠だバカ」
「うわあああん金蝉起きろォォ!!!!寝たら死ぬんだよォォ!!!」
「もう寝ちまってるよ、誰かさんのせいで強制的に」
 泣いて意識のない金蝉に縋る悟空を視界に入れないようにしてる天蓬を横目でみる。悟空相手では流石の天蓬も罪悪感が芽生えるのだろうか。
「………解決策を探してきます」
 ふらりと部屋から出ていく天蓬の背中はどこか小さく見えた。




 元気で物をしらない小猿に堅物で融通のきかない箱入り坊ちゃんに汚くて変人でオタクな副官。自分の周りにいる奴らはそれぞれが毒をもちすぎる、自分も含めて。

 でも、そんな自分達が嫌いじゃない。

 綺麗な最後もいいけれど、奴らと騒いで汚く散るのもいいかもしれない。こいつらと一緒なら。例え肉体的に距離が離れていても、一番大事な所が近いのなら大丈夫。
「…………汚いほうが、お似合いかもね」
 俺らは綺麗に纏まってるタイプじゃないから。






 ちらちらと、散る桜をみる。

 地面に落ちて、土にまみれたそれは綺麗といえるものではなくなっていた。







終焉



──────────────────

久しぶりに最遊記書きました!
外伝完結記念ってことですが逃走劇の話に繋げると泣けてくるので辞めました。でもちょっとシリアスで今回は捲簾視点です。
やっぱり最遊記はいいなあ…。
ちょこちょこ復活させたいです。放置しすぎだよ…


お読み下さりありがとうございました\(^^)/
コバナシ : comments(0) : trackbacks(0) : pankmia